今上の甥っ子で当代一の貴公子兵部卿宮と按察使大納言姫君の継子いじめ風恋愛譚。
小夜衣の成り立ち
作者不詳。承明門院女房の小宰相？
成立年不詳。文章から見て鎌倉期？
小夜衣あらすじ
この物語は、当世一の風流貴公子兵部卿宮と按察使大納言姫君の継子いじめ風恋愛物語です。
当帝の甥っ子の兵部卿宮は、按察使大納言妾腹の子で母亡き後山里の祖母のもとで暮らす姫君と深く愛し合う仲となります。
けれど宮は関白の妹姫と政略結婚させられ、山里の姫君とは手紙ばかりになり、通いが途絶えがちになってしまいます。
按察使大納言は本妻腹の姫を入内させようと腐心し、山里の姫君を邸に引き取って本妻腹の姫に付き添わせることにしました。
ところが帝は入内した本妻腹の姫ではなく、付き添いに従わされた山里の姫を見初めてしまうのでした。
山里からいなくなった姫を、彼女の心変わりだと誤解してしまった兵部卿宮は、後日後宮で姫を見つけますが、近づくすべがありません。
按察使大納言の北の方は、帝が山里の姫君にご執心とのうわさに激怒し、姫を民部丞の家に監禁してしまいます。
帝・大納言・兵部卿宮と、それぞれが姫の失踪を嘆きますが、民部丞の妻の気転により姫を救出。父大納言と再会した後、宮は大喜びで姫を自邸に迎えるのでした。
傷心の帝はその後譲位。東宮即位後は、兵部卿宮が新東宮へ。
山里の姫君は若宮を生みます。やがて東宮は即位。姫は中宮となり、父大納言は関白を譲られ、一族は繁栄したのでした。めでたしめでたし。
小夜衣についての私見
鎌倉期、京の都の没落貴族たちは、自分たちの先祖が味わった栄光を求めて物語をつくりました。
継子いじめ風物語『小夜衣』もその一つ。平安朝盛時に立ち返らせてくれるこの物語も、当時の貴族たちに大変喜ばれました。
原文を読んでいて気が付くことといえば、豊かな自然描写や衣裳の色目などの細かい描写がないこと、精緻な心理的会話がないこと。読者各自の想像にお任せする・・・ということなのでしょう。ストーリーがテンポ良く運んで、とてもフットワークの軽いお話に仕上がっています。小説というより、長編おとぎ話といったほうがよいかもしれません。
小夜衣の登場人物の紹介
小夜衣 現代語訳 目次
現代語訳はこちらです。
その1． ハイスペック貴公子、気の毒な身の上の姫の存在を知る
その2． 宰相の君、恋の仲立ち
その3． 宰相の君、尼君を説得にかかる
その4． 兵部卿宮、姫の住む山里の家を発見する
その5． 押せ押せで説得にはげむ宰相の君と不安な尼君
その6． 兵部卿宮、ついに山里の姫君に会う
その7． 東雲の宮（兵部卿宮）、本願叶った三日夜通い
その8． 最高セレブな姫君との縁談を持ち込まれて
その9． 東雲の宮、超セレブ姫との縁談が決まる
その10．東雲の宮、意にそぐわない結婚への苦悩
その11．もう逃げられない三日夜餅
その12．逢いたいのに逢えない悲しみ
その13．一夜の逢瀬の後のいや増す無常感
その14．冷淡な背の君の仕打ちに
その15．父按察使大納言の決意
その16．悲しみを打ち明けられない姫、気づかぬ宮
その17．山里の我が家とのお別れ
その18．東雲の宮と小夜衣の姫、それぞれの後悔
その19．暮らしの激変に戸惑う小夜衣の姫
その20．東雲の宮、噂の対の御方の素性を知る
その21．東雲の宮、山里の尼君に現状を愚痴る
その22．今上、可憐な小夜衣にご執心
その23．小夜衣、宮中で東雲の宮を見かけ…
その24．今上の隠しきれない恋心
その25．ゴシップに興味津々な女房たち
その26．今上、小夜衣に迫りまくる
その27．今北の方の罠
その28．小夜衣の姫の失踪
その29．悲しみの衝撃、走る
その30．小夜衣の姫、幽閉される
その31．小夜衣の姫の不在に悩める今上
その32．今上と東雲の宮、立場は違えど思いは一緒
その33．民部少輔の下心
その34．冷え切った東雲の宮夫妻、すれ違いの果てに
その35．東雲の宮、妻への遅すぎた真心
その36．監禁された家の主民部少輔の画策
その37．悲しみの心を分かち合いに山里の家へ
その38．民部少輔、恋心をつのらせる
その39．一すじの希望の光が
その40．民部少輔の妻の告発
その41．姫君救出計画
