鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小夜衣36・監禁された家の主民部少輔の画策

さて、対の御方たちが捕らわれている民部少輔の家では、御方の可憐さにすっかりのぼせ上った主人の民部少輔が、無い知恵をしぼり出そうとしていました。「よくもあんなみすぼらしい妻と長年つれ添ったものだ。あの美しい姫さまを拝み奉り、毎日お世話できた…

振り返れば奴がいる? その3 まじないの結末は…

月明かりに照らされながら、斉信が何かに耐えるようにじっと立ち尽くしている…そんなふうに行成には見えた。気付かれないように、かなり離れたところで見守っているのだが、心配で心配でたまらない。流言飛語やまじないなど信じるつもりも無いが、斉信は深刻…

振り返れば奴がいる? その2 心配のあまり斉信を尾行する行成

(しかし、聞いたその晩に実行するとは思いもしなかったぞ)今、行成は暗闇を歩く斉信のかなり後ろを歩いている。要するに、あとをつけているのだ。あのあと、行成は屋敷に戻るなり舎人(とねり)に言いつけて、斉信の屋敷を見張らせていた。亥の刻(午後十…

振り返れば奴がいる? その1 怪しげなまじないの噂を聞いた斉信

『…未来の夫が知りたいならば、夜中に麻(アサ)の実をまきながら廃寺の周囲を回ればよい。”私はアサの種をまいた、アサの種を私はまいた、私をもっとも愛する人は、私を追いかけてきて刈り取れ!”と叫び、おそるおそる背後を振り向くと、幻の夫が現われ、足…

狭衣物語27・今姫君の母代の衝撃の告白

対の屋の御簾のもとで、「大将が参りました」と狭衣自身が告げると、蚊の鳴くような声で女房が何か言い、バタバタと逃げる音がした。こうして逃げ隠れするのが洞院上の流儀なのだろうかと思い、御簾を引き上げてのぞくと、たくさんの女房たちが重なり合うよ…

狭衣物語26・洞院上の願い

ある日の昼下がり、狭衣は洞院上に呼ばれた。「狭衣さまは常日頃から、中宮さまの御母君の坊門上と親しくしておいでですが、私どもの方にはちっともお顔を見せては下さらないので、お越しをお願いした次第です。私も年をとるにつけ、だんだんと心細くなって…

第2段 ムカ男、性格美人に手を出す

奈良から遷都したばかりのまだまだ人家まばらな京での話。ムカ男は西の京の女のもとに通っていました。この女、容姿もさることながら気立てがとても良いいわゆる性格美人。女のもとに通う夫がいるらしいにもかかわらず、真面目なムカ男は熱心に通って口説い…

第1段 ムカ男、春日の里の女に手を出す

元服したばかりの頃、ムカ男は春日の里に鷹狩に出かけました。その時、ふと美しい二人の姉妹を見かけました。こんな田舎には不釣合いなほどの美しい二人でしたので、ムカ男の心は悩ましくときめき、思いを伝えるために、しのぶ摺り模様の狩衣の裾を切り、歌…