鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

狭衣物語33・堀川大殿、狭衣の結婚に向け正式に動く

狭衣の父である堀川大殿にももちろんこの噂は伝わった。しかし、「そうであったか。狭衣が長年思いを懸けていたのは一品宮さまであったのか。なるほどなるほど、それで合点がゆく。女二の宮さまや三の宮さまをすすめても、縁談を嫌がっていた理由が」とカン…

山路の露4・姉弟の再会と浮舟の願い

簀子の端に座る浮舟と、下の庭に控える小君。実の姉と弟はやっと対面できました。小君は、主人の薫の手紙を渡すより何より、まず姉の姿を確かめました。久しぶりに見る姉は昔と変わらず小柄でとてもきれいで、ただ、豊かだった髪の長さだけが以前とまったく…

小夜衣37・悲しみの心を分かち合いに山里の家へ

「山里の家に姫ががおられた頃が懐かしいよ…あの人が待っている、ただそれだけで、がむしゃらに馬を走らせたものだった」馬に揺られながら在りし日のことをぼんやり思う東雲の宮。一行が山里に到着すると、どうやら家の者は御堂で夕べの勤行の最中のようです…

第9段 杜若&旅の僧&都鳥にムカ男の消息を聞く

杜若の精の話ええ、他のお供の公達が目に入らぬくらいの、それは凛々しい貴公子だったわ。女心をわしづかみにする風情ってああいう容貌のことを言うのかしら。ここ美しい景色でしょ。見渡す限りの湿地が私たちの棲む場所。この静けさの中、風に身を任せて揺…

第8段 浅間嶽にムカ男の消息を聞く

うーん?そんな美丈夫一行が私の足元を通り過ぎたかどうか、ちと記憶に残っとらんな。私の裾野を通る者はたいがい目にしているが、任国に向かう国守一行か地元民の猟師ばかりだ。目の覚めるような美貌の貴公子とその一行にこの私が気づいていないということ…