鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第7段 伊勢の浪にムカ男の消息を聞く

本日このような辺鄙な場所をお訪ね下さいまして、まことにありがとうございます。もしやあなたさま、都で何かご災難に…は?そうですか、それは失礼致しました。いえ、ときおり見かける人間といえば、赤銅色に日に焼けた無骨な漁師やむくつけき土地長者、ごく…

無名草子10・著名な女性たちを論じる その3

少納言そうよ、何度もグチグチ言うようで悪いけど、この気持ちだけは何回言っても言い足りないのよ。その昔、大斎院様(村上天皇皇女選子内親王)が上東門院様(彰子)に物語を依頼した時、紫式部を召して、新しく『源氏物語』を作らせたっていう話、腹が立…

無名草子9・著名な女性たちを論じる その2

少納言母君の和泉式部、これほどすぐれた歌人はいないわね。彼女の歌は、現世だけの巡り合わせとは思えないくらい、とびっきりの才能とセンスにあふれているわ。物思へば 沢の蛍も わが身より あくがれいずる 魂かとぞ見る貴船神社の百夜参りで、この歌に貴…

第6段 ムカ男、駆け落ちする 

ムカ男は、とても叶えられそうになかった高嶺の花の女に通い続け、女と情を交わすようになりましたが、ある夜とうとう女を家から盗み出してしまいました。暗い夜道を逃げ続け、芥川という川のほとりに来た時、女は草の上にきらめく露を指さして、「あれは、…

無名草子8・著名な女性たちを論じる その1

小侍従それにしても、これは、という語り甲斐のある方ともなるとなかなか難しいわね。でも、世間一般にひとかどの方と言われている女性の真似でもして、自分を奥ゆかしく見せたいものですわ。 少納言モノマネをするなんてくだらない事よ。小侍従。 中務女御…

無名草子7・勅撰集、私撰集の意見を交わす

中務そうね。今までああだこうだと言ってきたことは皆作り事と言えば作り事ですもんね。物語なんだもの。歌物語なんかは、和歌中心の当代有名人の恋愛話で、実話だものねえ。『伊勢物語』や『大和物語』は実際の出来事と思えば感慨深いわ。 少納言『伊勢』は…