鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

箱の中身 その2

次の日の早朝。「こんなところに汚らしい沓が置き捨ててあるわ!一体誰なの、こんなひどいことなさるのは!」ひとりの女官がけたたましく騒ぎ立てている。小兵衛の君だ。食事の準備が整った御膳を置いてある棚に、箱が一つあるのを一番に見つけた彼女は、中…

箱の中身 その1

方弘は汚い沓を入れた箱を抱えていた。「おい方弘、もっと大事に扱えよ…大事な贈り物なんだから。まったくおまえはがさつだな」「わかってるって、心配するなっつーの」信経と方弘は後涼殿へ向かって、南廂を歩いている。事の発端は殿上の間での方弘のためい…

第12段 ムカ男、女を武蔵野に置いて逃げる

ムカ男は、とある娘を見初め、親のもとからこっそり盗んで逃げました。相思相愛の二人は武蔵野の方に駆け落ちしようとしましたが、愛の逃避行も空しく、結局、国守に追われ捕らえられてしまったのでした。ムカ男は娘を草むらに置いて逃げました。追っ手がや…

小夜衣39・一すじの希望の光が

一方で妻は、夫の惚けた顔を横目に、対の御方たちのいる部屋にせっせと参上しています。夫が対の御方に出した手紙の内容も、妻にはとっくに筒抜けです。監禁部屋に出向いた妻は、生きる気力をすっかりなくしている対の御方に同情の言葉も見つかりません。側…

医師・和気重秀の水飯ダイエット指南

大宮人の日々の健康を長い間見守り続けていますが、記憶に残るほどの大食漢と言えば、そう、忘れようにも忘れられない大飯喰らいの三条中納言朝成卿がおられました。つい先日、五十八才で亡くなられましたが、まさか怨死だとは。あの方は絶対に心臓の病か消…

狭衣物語38・ようやく愛しい我が子に出逢えて

一品宮が下がった後の昼下がり、幼い人のいる気配がする部屋の障子のもとに近づいて、狭衣はこっそりと穴をあけてみた。穴をのぞくと、その向こうに、九つか十くらいの遊び相手がたくさんいる中に、若宮と同じくらいの年かっこうの、それはそれはかわいらし…

狭衣物語37・狭衣、温和な妻一品宮にモラハラ行為

狭衣は一品宮には後朝の手紙は贈らなかったが、宮の母君である女院には手紙を贈った。 『まだ知らぬ暁露におき別れ八重たつ霧にまどひぬるかな(起きてあなたのもとから別れての帰り道は、あなたへの想いが幾重にも重なって、道に迷うほどでした)』 「まあ…