鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

伊勢物語

第19段・ムカ男の元カノ、切ない思い

高貴なる御方のもとに出仕していたムカ男が、やはり同じ御方にお仕えしていた上﨟女房と恋仲になりました。ところが、ふとしたことから二人は別れてしまいました。お仕えしている御方が同じなので、二人は別れた後も近くで働いているのですが、女の方は御簾…

第18段・ムカ男、風流ぶった女の挑発を受け流す

むかし、中途半端に風流ぶっている女がいました。その女はムカ男の家の近くに住んでいました。女は、そこそこ歌を詠めるつもりでいましたので、ムカ男の風流さを試してやろうと思い、ある日、盛りを過ぎて色あせたうつろい菊に歌を添え、ムカ男のもとに送り…

第17段 ムカ男、桜花を愛でる

何年も訪ねて来なかった人が、桜の花が真っ盛りの時期にふいに桜を見にやってきましたので、その家の主人が歌を詠みかけました。あだなりと名にこそたてれ桜花年にまれなる人も待ちけり(つれなく散って行く桜の花も、めったに来ないあなたのことをけなげに…

第16段 ムカ男、途方に暮れた舅に援助する

むかし、紀の有常という人がいました。仁明・文徳・清和と三代の帝にお仕えし、裕福な名家でしたが、晩年になって時勢も変わり、傍流となってしまいました。権力の切れ目は縁の切れ目。かつて時めいていた有常はすっかり落ち目となって、ごく平凡な貴族より…

第15段 ムカ男、陸奥の雰囲気美人に手を出す

ムカ男は、陸奥国でごく普通の人の妻のもとに通っていたのですが、その妻は、こんな辺鄙な土地には不釣合いなほど風情のある女でしたので、ムカ男は不思議に思って、しのぶ山忍びて通ふ道もがな人の心のおくも見るべく(近くにあるしのぶ山の名のように、こ…

第14段 蚕カップルになりたい女とムカ男の恋話

ムカ男が武蔵の国のはるか奥、陸奥の国に出かけました。特に目的もない旅でしたが、たどり着いた土地で、ムカ男はそこに住むひとりの女にものすごく惚れられてしまいました。京の都の見慣れないお洒落な貴族を、女が大変めずらしく感じたからです。積極的な…

第13段 ムカ男、二股かけを白状する 

ムカ男は、京からはるばる東国へ下り、武蔵国に滞在していました。彼は京の都に妻を置いたままでした。ある日ムカ男はその妻のもとへ手紙を送りました。表書きに『むさしあぶみ』とあり、手紙には、『言うのも恥ずかしいことだが、正直に言わないと、そなた…

第12段 ムカ男、女を武蔵野に置いて逃げる

ムカ男は、とある娘を見初め、親のもとからこっそり盗んで逃げました。相思相愛の二人は武蔵野の方に駆け落ちしようとしましたが、愛の逃避行も空しく、結局、国守に追われ捕らえられてしまったのでした。ムカ男は娘を草むらに置いて逃げました。追っ手がや…

第11段 ムカ男、旅の途中で友人へ消息を伝える

ムカ男はどんどん東国へと下って行きました。その際、旅の途中で友人に送った手紙には、忘るなよほどは雲ゐになりぬとも空ゆく月のめぐり逢うまで (私のことをどうか忘れないでください。お互い遠く離れてしまっているけれど、再会するその日まで)とあった…

第10段 ムカ男、田舎娘の母親から代作歌をもらう

ムカ男が京の都を離れ、武蔵の国をあてもなくさまよっていたところ、ちょっとした縁で地元の娘と知り合いました。娘の父は「相手は都の貴族さまだ、遊び半分ですぐに飽きて捨てられるぞ」と心配しましたが、娘の母は「こんな田舎なのに、願ってもない良縁」…

第9段 杜若&旅の僧&都鳥にムカ男の消息を聞く

杜若の精の話ええ、他のお供の公達が目に入らぬくらいの、それは凛々しい貴公子だったわ。女心をわしづかみにする風情ってああいう容貌のことを言うのかしら。ここ美しい景色でしょ。見渡す限りの湿地が私たちの棲む場所。この静けさの中、風に身を任せて揺…

第8段 浅間嶽にムカ男の消息を聞く

うーん?そんな美丈夫一行が私の足元を通り過ぎたかどうか、ちと記憶に残っとらんな。私の裾野を通る者はたいがい目にしているが、任国に向かう国守一行か地元民の猟師ばかりだ。目の覚めるような美貌の貴公子とその一行にこの私が気づいていないということ…

第7段 伊勢の浪にムカ男の消息を聞く

本日このような辺鄙な場所をお訪ね下さいまして、まことにありがとうございます。もしやあなたさま、都で何かご災難に…は?そうですか、それは失礼致しました。いえ、ときおり見かける人間といえば、赤銅色に日に焼けた無骨な漁師やむくつけき土地長者、ごく…

第6段 ムカ男、駆け落ちする 

ムカ男は、とても叶えられそうになかった高嶺の花の女に通い続け、女と情を交わすようになりましたが、ある夜とうとう女を家から盗み出してしまいました。暗い夜道を逃げ続け、芥川という川のほとりに来た時、女は草の上にきらめく露を指さして、「あれは、…

第5段 ムカ男、許されぬ逢瀬に夢中になる

ムカ男は、東五条のお屋敷に住んでいる女のもとに、人目を避けて通っていました。その女は、ムカ男にとって政敵とも言える一族の総領姫で、ムカ男も逢瀬ひとつに命がけです。女の乳母の手助けがなかったら、とても逢瀬を続けられなかったでしょう。ムカ男は…

第4段 ムカ男、女に突然去られる

ムカ男は、東の五条の皇太后宮のお屋敷に住むお姫さまのもとに通っていました。西の対の屋に住んでいるそのお姫さまのことを「しょせんは叶わぬ恋だから」程度に思っていたのですが、忍び逢いが重なるにつれ、ムカ男も、そして女の方も、次第に愛情が深くな…

第3段 ムカ男、高子姫に手を出す

ムカ男が、恋しい女のもとに、ひじきを添えて歌を贈りました。 思ひあらば葎(むぐら)の宿に寝もしなんひじきものには袖をしつつも(もしもあなたも私のことを思ってくれるなら、たとえそれがあばら家でもいい、互いの袖を夜具の代わりに共に過ごしてくれな…

第2段 ムカ男、性格美人に手を出す

奈良から遷都したばかりのまだまだ人家まばらな京での話。ムカ男は西の京の女のもとに通っていました。この女、容姿もさることながら気立てがとても良いいわゆる性格美人。女のもとに通う夫がいるらしいにもかかわらず、真面目なムカ男は熱心に通って口説い…

第1段 ムカ男、春日の里の女に手を出す

元服したばかりの頃、ムカ男は春日の里に鷹狩に出かけました。その時、ふと美しい二人の姉妹を見かけました。こんな田舎には不釣合いなほどの美しい二人でしたので、ムカ男の心は悩ましくときめき、思いを伝えるために、しのぶ摺り模様の狩衣の裾を切り、歌…