杜若の精の話ええ、他のお供の公達が目に入らぬくらいの、それは凛々しい貴公子だったわ。女心をわしづかみにする風情ってああいう容貌のことを言うのかしら。ここ美しい景色でしょ。見渡す限りの湿地が私たちの棲む場所。この静けさの中、風に身を任せて揺…
うーん?そんな美丈夫一行が私の足元を通り過ぎたかどうか、ちと記憶に残っとらんな。私の裾野を通る者はたいがい目にしているが、任国に向かう国守一行か地元民の猟師ばかりだ。目の覚めるような美貌の貴公子とその一行にこの私が気づいていないということ…
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