鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

古今著聞集・興言利口5 526~529段

526段 下野武守、息女を秦頼武に嫁がせる事 後白河院の随身の秦雷文の息子・頼武が嫁を迎えた。相手は近衛殿随身下野武守の息女である。婚礼当日、父親の武守は娘を相手方に嫁がせるのに何と徒歩で行かせた。娘にとっては人生のハレの日、車かせめて馬に乗せ…

古今著聞集・興言利口4 521~525段

521段 粟田口大納言忠良、近衛基通公と歌を贈答する事 粟田口忠良卿は、権大納言時代も含めて長いキャリアを持つ大納言だが、政治活動より歌人生活が大事だったのか、朝廷に出仕するのを怠ってばかりだった。あまりの怠慢に、世間では、「ろくにお勤めしてま…

古今著聞集・飲食2 616~621段

616段 道命阿闍梨がそまむぎの歌を詠む事 大納言道綱の子・道命阿闍梨が巡礼修行の旅をしていて、あるとき、都では口にしたことのない、木こりや炭焼き人が食するような食べ物を供されたことがあった。道命阿闍梨は食事を用意した杣人(そまびと)に、「これ…

古今著聞集・飲食1 612~615段

612段 食は人の本にして酒は三友の一なる事 食べることは人間生活の基本である。治政の中でも「食える」保障は、国家の安定にもっとも重要な事柄だ。そして「食」の中でもとりわけ酒造りの起源は古く、スサノオノミコトの時代から始まったと伝えられる。まこ…

小夜衣15・父按察使大納言の決意

さて、今度は小夜衣の姫の父君である大納言の話です。大納言殿は、今北の方との間にできた娘の入内の準備に忙殺されていましたので、それ以外のことに関われる時間がなく、長い間、前妻との間にできた娘が住む、この山里を訪れる余裕さえなかったのでした。…

小夜衣14・冷淡な背の君の仕打ちに

毎日が憂鬱でならない東雲の宮は、どうしても新妻である二の姫につれない態度に出てしまうのでした。親の顔だけを立てた、その程度の妻…関白家の二の姫をそんな扱いにしてしまうのは失礼極まりないことなのに、今の宮にとって二の姫はとてもうっとうしい相手…

小夜衣13・一夜の逢瀬の後のいや増す無常感

返事を受け取った翌日、とうとう我慢しきれなくなった東雲の宮は、有明の月がようやく山の端にのぼるような真夜中、山里の小夜衣の姫のもとへ出かけました。できるだけ人目につかないよう牛車ではなく馬で、供回りもごくわずか、服装もわざと粗末にして、京…

小夜衣12・逢いたいのに逢えない悲しみ

その後も、両親の目や関白家の監視がきびしい事もあり、東雲の宮は山里の家を訪ねることが出来ないのでした。けれど、お手紙だけは絶えず差し上げるので、山里の家でも、「来てくださらないとはいえ、愛情が途絶えたわけではなさそうですが、でも…」と気を揉…

小夜衣11・もう逃げられない三日夜餅

さて、東雲の宮と関白家の二の姫とのめでたい婚礼に世間が大騒ぎしていた頃、ただ一人、女房である宰相の君だけが、小夜衣の姫のことを案じていました。(世間がこれだけ大騒ぎしているのだもの、来世までもと誓った殿方が、身分のつり合った権勢の家の姫と…

古今著聞集・変化2 593~597段

593段 承平元年6月、弘徽殿の東欄に変化の事 承平元年(931)6月28日午後2時頃、衣冠束帯姿の鬼が弘徽殿の東の欄干のほとりに現れ、消えていった。身の丈3mもあるかと思われるほどの大鬼が、白昼堂々と後宮の中心部に現れるなど、現実のこととも思えない。…

古今著聞集・変化1 588~592段

588段 人をたぶらかす変化(へんげ)にだまされない事 変化(へんげ)や妖かしのモノたちは、際限なくその姿を変え、見る者の心を惑わす。従って、如何に摩訶不思議を見せつけられようとも、決して信じてはいけないのだ。 589段 仁和3年8月東松原に変化が出…

狭衣物語12・飛鳥井女君の絶望と狭衣の後悔

狭衣さまの子供を身ごもっている事を知られないうちに死んでしまおう、飛鳥井女君がそう思い始めてから5日たった。船の上の生活が続いていたが、女君は水を見もしない。乳母を見るにつけ、こんな裏切りをするような者をよくも今まで頼みとしてきたことよ、…

古今著聞集・恠異(怪異)2 583~587段

583段 後朱雀院、清涼殿の屏風の上に怪人を見る事 後朱雀天皇が崩御される前年のこと。除目(じもく)の最中、清涼殿第五の間の奥にある四季屏風の上に、赤い組み紐を首にかけた巨人が現れた。誰かに見られているような気配を感じられた天皇の背筋は凍りつき…

古今著聞集・恠異(怪異)1 579~582段

579段 怪異の畏れ慎むべき事 怪異に出会えば物忌みをして誰しも身を慎まねばならない。しかし白居易が『凶宅の詩』で、「凶なるものは場所がつくるものではない、人の惑う心がつくり上げるものなのだ」とうたっているように、そこに住んでる人に不幸が生じる…

古今著聞集・興言利口3 517~520段

517段 基房の春日詣に召され、褐衣で供奉した秦兼国の事 奈良は春日神社へ参詣する摂政松殿基房(藤原基房)が、後白河院から秦兼国という随身を借りたときの話。当時の兼国は警護の仕事を嫌っていて、この依頼を面倒くさいと思いつつ請け負った。やる気ナシ…

狭衣物語11・乳母のたくらみ

狭衣の乳母子に道成という名の、式部の大夫でなかなかの色好みがいた。次の除目でどこかの国の守になる予定で、世間でも評判がよい人物である。この道成自身、常に「美しく、すぐれた女人をさがし出してみたいものだ」と言って、彼をぜひ婿にという声には耳…

狭衣物語10・狭衣との別れを決心した飛鳥井女君

訪問してみれば、狭衣の想像していたとおりで、飛鳥井女君は蔀もおろさず、端近に出て月をながめていた。そのたよりなさそうな様子に狭衣は思わず強く抱きしめて、逢えなかった時のあれこれを優しく語る。が、昼に見た源氏の宮の美しさを思い出し、『源氏の…

狭衣物語9・窮地に立たされた飛鳥井女君

この飛鳥井女君は、帥平中納言(大宰府長官と中納言を兼ねた平氏)の娘であった。両親は亡くなられたが、女君の乳母が主計頭(主計寮の長官)の妻で、夫が亡くなった後、不如意な生活を送っていたため、金儲けを狙って女君をあの仁和寺の威儀師に売りとばし…

古今著聞集・興言利口2 513~516段

513段 何かと要領が良い下野武正の事 法性寺殿(藤原忠通)が大坂四天王寺に参詣したときのこと。お供の下野武正が、道中の山崎で落馬した。その時は特に何も言われなかったが、後日、同じ山崎をまた法性寺殿が通過したとき、今回もお供に加わっている武正が…

古今著聞集・興言利口1 507~512段

507段 興言利口は場を盛り上げ楽しませる事 場を盛り上げる即興の笑い話・洒落話、あるいは露骨に卑猥な下ネタ話などの紹介。 508段 競馬の敗者をおもしろく批評した大納言経信の事 関白忠実公の随身・下野敦末が競馬(くらべうま)を務めることになったが、…

古今著聞集・宿執1 480~485段

480段 宿執は天性の染着する所なる事 前世からの因果とは生まれつきのもので、本人の努力で出来上がったものではない。学問武芸以下、一個人の才能・人柄・容姿は、それらを前世から受け継いできたのだ。死に直面しようが、それらの因縁から逃れることは難し…

小夜衣10・東雲の宮、意にそぐわない結婚への苦悩

婚礼も間近ということで、両家は準備で大忙しです。大宮は、「今まで一度も先方へお手紙を差し上げていないなんて、どうしたことですか。早くお手紙を書きなさい」と息子を催促するのですが、まったく気の乗らない宮は聞く耳をもちません。母宮の小言を聞き…

小夜衣9・東雲の宮、超セレブ姫との縁談が決まる

「この話を山里の姫君が聞いたら、どれほど悲しまれることだろう…」そればかりが気になって、親たちとろくに話を進める気すらありません。「そんなに気がすすまないのかねえ」「でももう承諾してしまったのですもの。先方に今さら…」院と大宮はそう言いなが…