2023-02-05から1日間の記事一覧
狭衣の乳母子に道成という名の、式部の大夫でなかなかの色好みがいた。次の除目でどこかの国の守になる予定で、世間でも評判がよい人物である。この道成自身、常に「美しく、すぐれた女人をさがし出してみたいものだ」と言って、彼をぜひ婿にという声には耳…
訪問してみれば、狭衣の想像していたとおりで、飛鳥井女君は蔀もおろさず、端近に出て月をながめていた。そのたよりなさそうな様子に狭衣は思わず強く抱きしめて、逢えなかった時のあれこれを優しく語る。が、昼に見た源氏の宮の美しさを思い出し、『源氏の…
この飛鳥井女君は、故帥の宮の娘であった。両親は亡くなられたが、女君の乳母が主計頭(主計寮の長官)の妻で、夫が亡くなった後、不如意な生活を送っていたため、金儲けを狙って女君をあの仁和寺の威儀師に売りとばしたのだった。女君のもとに毎夜のように…
513段 何かと要領が良い下野武正の事 法性寺殿(藤原忠通)が大坂四天王寺に参詣したときのこと。お供の下野武正が、道中の山崎で落馬した。その時は特に何も言われなかったが、後日、同じ山崎をまた法性寺殿が通過したとき、今回もお供に加わっている武正が…
507段 興言利口は場を盛り上げ楽しませる事 場を盛り上げる即興の笑い話・洒落話、あるいは露骨に卑猥な下ネタ話などの紹介。 508段 競馬の敗者をおもしろく批評した大納言経信の事 関白忠実公の随身・下野敦末が競馬(くらべうま)を務めることになったが、…
480段 宿執は天性の染着する所なる事 前世からの因果とは生まれつきのもので、本人の努力で出来上がったものではない。学問武芸以下、一個人の才能・人柄・容姿は、それらを前世から受け継いできたのだ。死に直面しようが、それらの因縁から逃れることは難し…
婚礼も間近ということで、両家は準備で大忙しです。大宮は、「今まで一度も先方へお手紙を差し上げていないなんて、どうしたことですか。早くお手紙を書きなさい」と息子を催促するのですが、まったく気の乗らない宮は聞く耳をもちません。母宮の小言を聞き…
「この話を山里の姫君が聞いたら、どれほど悲しまれることだろう…」そればかりが気になって、親たちとろくに話を進める気すらありません。「そんなに気がすすまないのかねえ」「でももう承諾してしまったのですもの。先方に今さら…」院と大宮はそう言いなが…