鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-02-12から1日間の記事一覧

狭衣物語13・予期せぬ出来事

数日後、狭衣は女二の宮付きの上臈女房である中納言内侍典侍のもとを訪れた。この中納言内侍典侍の姉は、女二の宮の母大宮と縁続きの者で大弐の乳母と言う。しかもこの大弐の乳母は狭衣の乳母でもあった。大弐の乳母は夫とともに遠国に下向してしまったが、…

古今著聞集・興言利口9 543~546段

543段 聖覚法師の力者法師が築地修理の工人をののしる事 持明院の棗堂(なつめどう)の前を聖覚法印が通った時の話。堂の築地を工人たちが修理しながら世間話をしていたのだが、聖覚法印の説法の雑談をした時、たまたま法印ご本人が輿(こし)にゆられて通り…

古今著聞集・興言利口8 540~542段

540段 七条院の女房権大夫、孝道と歌の贈答をする事 高倉院妃だった七条院に仕えた女房・権大夫の話。彼女は歌人建礼門院右京大夫の姪にあたり、その歌才を受け継いだ宮廷女流歌人・七条権大夫として評判だった。『秋きぬと松吹く風もしらせけりかならず荻の…

古今著聞集・興言利口7 537~539段

537段 下野種武、大仮名にて散状を書く事 後鳥羽院の治世の頃、某所で行われた競馬(くらべうま)で、下野種武という随身が敗者になった。勝負事の敗者は負けわざを披露するのがルール。とはいえ、一介の随身で豪華な宴会などができるはずもないので、せいぜ…

古今著聞集・興言利口6 530~536段

530段 下野武景、別名「善知識の府生」の事 後鳥羽帝の御時のこと。右少将藤原親平の息子性親が気性の荒い馬を持っていた。葦毛のたいそう癇の強い馬で、フェラーリのエンブレムくらい跳ね上がるクセがある。これに耐えて乗りこなせる者などめったにいないと…

古今著聞集・興言利口5 526~529段

526段 下野武守、息女を秦頼武に嫁がせる事 後白河院の随身の秦雷文の息子・頼武が嫁を迎えた。相手は近衛殿随身下野武守の息女である。婚礼当日、父親の武守は娘を相手方に嫁がせるのに何と徒歩で行かせた。娘にとっては人生のハレの日、車かせめて馬に乗せ…

古今著聞集・興言利口4 521~525段

521段 粟田口大納言忠良、近衛基通公と歌を贈答する事 粟田口忠良卿は、権大納言時代も含めて長いキャリアを持つ大納言だが、政治活動より歌人生活が大事だったのか、朝廷に出仕するのを怠ってばかりだった。あまりの怠慢に、世間では、「ろくにお勤めしてま…

古今著聞集・飲食2 616~621段

616段 道命阿闍梨がそまむぎの歌を詠む事 大納言道綱の子・道命阿闍梨が巡礼修行の旅をしていて、あるとき、都では口にしたことのない、木こりや炭焼き人が食するような食べ物を供されたことがあった。道命阿闍梨は食事を用意した杣人(そまびと)に、「これ…

古今著聞集・飲食1 612~615段

612段 食は人の本にして酒は三友の一なる事 食べることは人間生活の基本である。治政の中でも「食える」保障は、国家の安定にもっとも重要な事柄だ。そして「食」の中でもとりわけ酒造りの起源は古く、スサノオノミコトの時代から始まったと伝えられる。まこ…

小夜衣15・父按察使大納言の決意

さて、今度は小夜衣の姫の父君である大納言の話です。大納言殿は、今北の方との間にできた娘の入内の準備に忙殺されていましたので、それ以外のことに関われる時間がなく、長い間、前妻との間にできた娘が住む、この山里を訪れる余裕さえなかったのでした。…

小夜衣14・冷淡な背の君の仕打ちに

毎日が憂鬱でならない東雲の宮は、どうしても新妻である二の姫につれない態度に出てしまうのでした。親の顔だけを立てた、その程度の妻…関白家の二の姫をそんな扱いにしてしまうのは失礼極まりないことなのに、今の宮にとって二の姫はとてもうっとうしい相手…

小夜衣13・一夜の逢瀬の後のいや増す無常感

返事を受け取った翌日、とうとう我慢しきれなくなった東雲の宮は、有明の月がようやく山の端にのぼるような真夜中、山里の小夜衣の姫のもとへ出かけました。できるだけ人目につかないよう牛車ではなく馬で、供回りもごくわずか、服装もわざと粗末にして、京…