対の屋の御簾のもとで、「大将が参りました」と狭衣自身が告げると、蚊の鳴くような声で女房が何か言い、バタバタと逃げる音がした。こうして逃げ隠れするのが洞院上の流儀なのだろうかと思い、御簾を引き上げてのぞくと、たくさんの女房たちが重なり合うよ…
ある日の昼下がり、狭衣は洞院上に呼ばれた。「狭衣さまは常日頃から、中宮さまの御母君の坊門上と親しくしておいでですが、私どもの方にはちっともお顔を見せては下さらないので、お越しをお願いした次第です。私も年をとるにつけ、だんだんと心細くなって…
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