鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

古今著聞集

古今著聞集・偸盗4 441段

441段 強盗の棟梁大殿小殿が事 後鳥羽院の御世、大物なる二人の強盗がいた。名前を大殿・小殿という。ある時、大殿が捕らえられたことがあった。この時小殿が検非違使庁に出向き、判官章久(あきひさ)に願い出た。「長年お尋ね者の『小殿』と申す人物は、こ…

古今著聞集・偸盗3 437~440段

437段 所衆行実のからめ取りたる盗人、北陣にて詠歌の事 承久年間のある年、某お屋敷に忍び込んだ盗人を内裏に追い込んで捕らえたことがあった。蔵人所の下級武士の行実という者が記録所付近で取り押さえた。行実はその盗人に水干用の袴と紅の衣を着せ、略奪…

古今著聞集・偸盗2 433~436段

433段 検非違使別家の女房強盗の事露顕して禁獄の事 大納言隆房卿が検非違使別当だった頃の話。ある時、白川あたりの某屋敷に強盗が入った。そのお屋敷にずいぶん気性のしっかりした家来がおり、勇敢に強盗一味と戦っていたが、強盗の群れの中にうっかりまぎ…

古今著聞集・偸盗1 427~432段

427段 盗賊は刑獄の法たる事 盗みをする者は法律に基づいて厳しく罰せねばならない。次から次へと罪を重ね、他者の金品を求めて闇を徘徊するような輩は、どこに居ようとも決して放置してはならない。・「盗」はスリ的な行為、「賊」は人の命を奪うような深刻…

古今著聞集・画図5 403~406段

403段 天福元年後堀河院らにより開催された貝合わせの事 天福元年、退位して間もない後堀川院とその中宮だった藻璧門院が、内大臣西園寺実公の豪邸・常盤井殿にて絵を賭け物にした貝合わせを開催した。貝も素晴らしかったに違いないが、注目したいのは、賭け…

古今著聞集・画図4 399~402段

399段 伊予入道、幼少時不動明王の落書きをする事 伊予入道・藤原隆親は幼少の頃より絵が上手だった。彼の父親は、我が子の絵の才能をなぜか気に入らなかった。この父親は藤原隆能という著名な絵師で、現在徳川美術館や五島美術館に収められている国宝『源氏…

古今著聞集・画図3 394~398段

394段 琵琶玄象の撥面の絵の事 名器『玄象』の撥面の絵柄は早くから消えていたのでその絵柄を知る人はいない。騎馬で打毬をしつつ舞う姿が描かれていたとの説がある。名器『良道』の撥面はこの絵柄を模して描かれたと聞く。しかし現在の良道の撥面はそのよう…

古今著聞集・画図2 389~393段

389段 絵の大上手常則と小上手公望の事 小野宮大臣・藤原実頼が自邸の衝立障子に松景色を描かせようと飛鳥部常則に依頼したが、あいにく不在だったため、巨勢公望を召し出して描かせた。後日、家に戻った常則に、公望の描いた衝立障子の松景色を見立てさせた…

古今著聞集・画図1 383~388段

383段 絵画は閑中の産物であるという事 とりどりの色で万物をあますところなく表す画図。対象となるものをつぶさに観察し、自分の色で表現する『絵』は、時間を費やす趣味としてまことにふさわしい。 384段 紫宸殿ならびに清涼殿の障子の由来の事 紫宸殿の障…

古今著聞集・好色4 331~332段

331段 後嵯峨天皇、某少将の妻を強引に召し上げる事(なよ竹あるいは鳴門中将物語) 後嵯峨天皇という御方は土御門天皇の第三皇子、諱名(いみな)は邦仁(くにひと)と申します。父帝(土御門天皇)は承久の乱のおり、御父後鳥羽上皇や御弟順徳天皇らが次々…

古今著聞集・好色3 326~330段

326段 大宮権亮、女房の局で直衣を前後ろに着た事 どの時代のなんという何という公達だったかは存じませんが、とある大宮権亮(おおみやごんのすけ)が、親王と一緒にお出かけした帰り(還御)の出来事です。大宮権亮というのは、皇太后職というお役所のナン…

古今著聞集・好色2 322~325段 

322段 後白河院において、小侍従が懺悔する事 ある日ののどかな昼下がり、後白河院の御所で、院が気の置けない人たち相手に、まったり雑談していました。「皆の者。忘れようにも忘れられない、そんな過去の思い出はないかな。ちょうど良い機会だ、懺悔の意味…

古今著聞集・好色1 315~321段

315段 イザナギ・イザナミ二人の神様の婚姻の事 イザナギという男神とイザナミという女神が、世界初の地・オノコロ島に降り立ち、夫婦となった経緯を申しましょう。まず女神の方が、「まあなんて良い男でしょう」と誘いかけましたところ、男神もそれに応えま…

古今著聞集・能書2 291~293段

291段 行成の子孫行能が音楽堂の額を依頼された事 法深房(藤原孝時)は、管弦の道場として自分の持仏堂を開放し、そこには同好の士たちが絶えず出入りしていた。ある日、堂の名『阿釈妙楽音寺』を書いた額を作製するべく、建長3年(1251年)8月13日、三位入…

古今著聞集・能書1 285~290段

285段 尺牘の書疏は千里の面目なる事 手紙や書状の筆跡が上手な者は、千里の先までその名が称賛される。文字の達人は、永久不滅にその名が歴史に残ると言ってよい。あらゆる芸術の中で、『書』はとりわけ優れた芸道である。 286段 嵯峨天皇、弘法大師と手蹟…