鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-02-18から1日間の記事一覧

古今著聞集・宿執2 486~492段

486段 楽人時資、院の勅に反し、寵童に奥義を授けぬ事 白河院が御在位だった頃の話である。ある時時資(ときすけ)という楽人が帝に召され、当時帝のご寵愛だった二郎丸という名の稚児に、貴徳と納蘇利の楽の秘儀を授けよという勅定がおりた。が、時資は固辞…

古今著聞集・宿執3 493~496段

493段 重病をおして神楽行事を行った人の事 故高倉院の笛の師匠だった藤大納言実国は、寿永元年(1182年)頃病気で寝込んでいたのだが、闘病中にも関わらず、豊楽院清暑堂の御神楽の本拍子役に選ばれた。清暑堂での神楽は大変重要な行事なので、実国は息子二…

古今著聞集・変化3 598~601段

598段 二条院の御時、南殿に変化の出る事 二条院が御在位だった頃の出来事。ある年の新嘗祭、五節の舞が行われた卯日の深夜、南殿(紫宸殿)の東北の片隅を、主殿司が歩いていたところ、背後から誰かに頸(くび)の辺りを押される気配を感じた途端、主殿司は…

狭衣物語15・しでかした現実から逃げる男

女二の宮の宮中退出の話を聞いた狭衣大将は、いてもたってもいられず、中納言内侍典侍のもとへ出向いた。「とにかく一度でいいからお会いしたいんだ」という狭衣の真剣な様子に内侍典侍は、「いまにも消えてしまわれそうな弱りようですので、母大宮さまが夜…

狭衣物語14・女二の宮、婚儀前の懐妊発覚

「お待たせいたしました。少々風邪を引きまして、今まで休んでおりました」「昨日の晩も、君に会いに行ったんだけどね。見放されたかと思ったよ」「申し訳ございません。でも狭衣さま、御降嫁の件もだんだんと具体的になってきておりますのに、いつになった…

小夜衣18・東雲の宮と小夜衣の姫、それぞれの後悔

かわってこちらは東雲の宮。宮は、小夜衣の姫をこっそりかくまう場所を準備したので、いつものとおりお手紙を山里の家に送ったところ、お使いの者が「大納言邸へ引っ越されたそうです」と手ぶらで戻ってきましたのでびっくり。「なんだって!?そんな話は聞…

小夜衣17・山里の我が家とのお別れ

さて、按察使大納言のお屋敷では、来月入内予定の姫の準備に追われていましたが、父君の大納言は、山里の小夜衣の姫をちゃんとお迎えすることも忘れていませんでした。姫たちが、屋敷のどたばたに遠慮してしまうのではないかと心配していましたが、わびしい…

小夜衣16・悲しみを打ち明けられない姫、気づかぬ宮

逢えなくなって、どのくらい経つのかな…と、東雲の宮は今夜も独りもの思いにふけっています。「今宵こそ」「今宵こそは」と毎日思っているのですが、両親に知られてやっかいなことになるのも鬱陶しい、だからと言って、心から愛する女を打ち捨てておくのは男…