鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-07-23から1日間の記事一覧

狭衣物語32・権大納言、狭衣と一品宮の噂を言いふらす

それから数日後、その権大納言は一品宮の中納言の君のもとをたずねた。「あの夜、この屋敷から出て行く狭衣の君を見かけましたよ。そういうわけだったんですねえ。たしかに一品宮と狭衣の君がわりないご関係なら、私は邪魔以外の何者でもないですから。しか…

狭衣物語31・狭衣、忘れ形見の子見たさに

今上は、亡くなられた御父君の故一条院を忘れられないでいた。発病後、あまりにも早く崩御され、子としてお見舞いも満足に出来なかったことをいつまでも後悔していた。そのせいもあって、残された母后(女院)と妹の姫宮をことのほか大切にしていた。この妹…

狭衣物語30・洞院方の今姫君のドタバタ事件

さて、洞院上が入内を画策している今姫君である。二月に入内の予定ではあるが、世間の人から、「なんてお幸せなのでしょう。大きな声じゃ言えないけど、もとはといえば一介の女房の産んだ物の数にも入らない方なのに、洞院のお方に引き取られて後宮入りとは…

狭衣物語29・狭衣、涙の追善供養

二十日過ぎの細い月影が霞みがかって見える。四方の山々に暁を告げる寺の鐘の声が寂しく響き渡る。ひなびた山里のこんな風景を、飛鳥井女君も毎日見て暮らしたのだろうか…そんなふうに狭衣が女君のことを思いやっていると、隣の部屋で若い女房たちの声が聞こ…