2023-02-26から1日間の記事一覧
私は頭の中将藤原斉信。私は今、朱雀門を出て南にすぐの、大学寮という所の門前に立っている。ここへ来たのは近衛府の仕事でもなければ蔵人としての仕事でもない。とある筋からの依頼で、大学寮の職員にインタビューにやってきたのだ。え?誰の以来かって?…
それからしばらくして、筑紫に下っていた狭衣の乳母子である道成が、国司に任ぜられるとのことで、正月に京に上ってきた。道成は狭衣に対面して、大宰府からの道中の興味深いことなどを、おもしろく物語る。そのうち、入水した道成の女君の話になったが、ど…
すさまじきものは師走の月とはよく言われるが、見る人見る時間が違えば、また格別なものとなる。狭衣は、明け方の寒気に澄み渡る師走の月を見ているうちに、どうにもこうにもたまらなく心細くなり、居ても立ってもいられず、乳母子の道季(飛鳥井女君をさら…
555段 能筆で知られたぐうたら智了房の事 少し前の話。『無沙汰の智了房』という者がいた。無沙汰とは怠け者の意味で、つまりこの智了房はぐうたらで、約束を守らないことが度々あったのだった。だがこの智了房はたいへん字が上手く、よく書写を頼まれていた…