鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

思考青年 その1

開け放した御簾の向こうの前栽に、雨に濡れた菖蒲の群れが見える。五月の長雨に乾くひまもないその花びらは、涙に濡れた高貴な女人の袖のようで、同じ紫でも、日の光を受けて耀く藤の花とはまた違った風情がある。ああ、うっとうしいなあ…。それまで書き物を…

小夜衣25・ゴシップに興味津々な女房たち

その後も、今上はせっせと梅壺に渡っては、つれづれのなぐさめに楽器を合わせたりなさいます。対の御方に筝の琴を弾かせ、今上自身は笛を吹いたりするのですが、お二人の合奏を快く思わない女御は、今上に琵琶を勧められても手もつけようとしません。仕方が…

小夜衣24・今上の隠しきれない恋心

五節の舞のあとは管弦の宴です。昼と間違えるような明かりの中、名だたる殿上人や女房たちが楽器をかき鳴らし、華やかに夜が更けてゆきます。そんな中、ただ一人東雲の宮だけがしょんぼりと座っています。「今頃御簾の内のどこかにいらっしゃるのだろうか。…