鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2023-03-21から1日間の記事一覧

大嘘今昔物語 その3

月明かりに慣れた目に、田舎風に小柴垣をめぐらした前栽が、ぼんやりと見える。風が涼しく吹き、泉水の水音が心地よい。この屋敷が完成する頃には、虫の声も草むらに響き渡り、蛍も宵闇に濃く淡く光を放ちながら飛びめぐることだろう。池の水際の夜景もまこ…

大嘘今昔物語 その2

「…流れが止まった水は、行き場のない負の魔力がよどむっていうからな。悪さをしないとはいえ、斉信、用心に越したことはないぞ」子の刻(午前0時頃)少し前、二人を乗せた牛車は、十七夜の月に照らされた五条高倉のあたりをゆっくり歩いていた。やがて、件…

大嘘今昔物語 その1

(今昔物語巻二十七 :水の精、人の形になりて捕われし話より)「おお中将殿。前越前守の屋敷に、女のあやかしが出る話はもう聞きましか?」「女のあやかし?」辰の一刻(午前七時)、内裏の宿直所(とのいどころ)に出向いた斉信の、これが開口一番の言葉だ…

第二回直撃レポートin六波羅蜜寺

『勅なれば いとも畏し』とはよくいったものだ。私は今、内裏の南、鴨川と鳥辺野にはさまれた六波羅蜜寺の前にいる。今日はこの寺に用があるわけだが…いや、仕事だ。いらぬ邪念は捨てなければ。神聖な寺での邪念は無用。多少足が震えている気もするが、さっ…