鈴なり星

平安古典文学の現代語訳&枕草子二次創作小説のサイト

2024-01-14から1日間の記事一覧

空の贈り物 その3

「…やはりタチの悪いタヌキかイタチが化けたのでは」安堵しているのか不安なのかよくわからない声で則光が言います。「ははは。それならそれでもかまわないさ。とにかく花びらのような雪を約束してくれたのだから。さて、ずいぶん道草を喰ってしまった。山の…

空の贈り物 その2

「おかしいですね、道を間違えたのでしょうか。僧庵に行く途中にこんな泉があるなんて、聞いたことがありません」泉の水面には氷が張っていて、一箇所だけ氷にヒビが入っています。どうやら斉信のムチは、泉の底に沈んでしまったようでした。「おや?見たま…

空の贈り物 その1

今は昔、一条天皇の御世にイケメン蔵人頭がおりました。帝の信任も篤い彼の名は藤原斉信。今日は帝の御使いで、比叡山のえらいお坊さまの所までお出かけです。帝の持病である神経性胃炎がひどくなったため、ここのえらいお坊さまに祈祷を頼みに来たのです。…