鈴なり星

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2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

公任、ムカデ退治に巻き込まれる その2

――それから四半時もしないうちに。ダンッ!ダンダンッ!ダンダンダンッ!ダダン!!バシッ!バシバシッ!バンバンバンッ!!床を踏み鳴らす荒々しい足音と、何かを叩くような音が聞こえてきた。その暴力的な音に混じって、女の泣き叫ぶ声と男の怒声も聞こえ…

公任、ムカデ退治に巻き込まれる その1

公任は前方を行く一行を眺めている。彼の視線の先には、枯れ草を山のように抱えている頭の中将とその部下数人が歩いていた。(どうしてもっとサクサク歩かないんだ。追い越さなきゃならないじゃないか。うーんシカトして追い越そうか。あんな荷物を抱えてい…

古今著聞集・飲食5 632~634段

632段 右大臣徳大寺実定、屋敷に池庭を構えて酒宴する事 文治3年(1187)の話。当時右大臣だった左大臣藤原実定公は自邸の徳大寺の屋敷に池庭を造り、中御門左大臣藤原経宗公をお招きした。当時右大将だった藤原実房と、検非違使別当だった藤原頼実が従者と…

古今著聞集・飲食4 626~631段

626段 保延6年10月白河の仙洞に行幸の事 前段と同じ保延6年(1140)10月、鳥羽上皇の住む仙洞御所へ崇徳天皇の行幸があった。御前にて晩酌のおり、当時右兵衛の督だった藤原家成卿に包丁式で鯉をさばくように、との沙汰があった。家成卿は辞退したのだが、そ…

小夜衣43・座敷牢からの奇跡の解放

外の景色もまともに見えない奥まった狭い部屋に、姫と女房ら三人が身を寄せ合って座っていました。大納言は姫の姿を見るなり駆け寄り、「姫、姫や。ああなんてひどい所に。よくがんばりましたね。この父が来たからには、苦しいこともつらい目ももうお終いで…